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第5話 『落涙の蕾花』

■日付

→ この日は8月10日。


■ジンのチカラの意味

 一夏、モノローグ。

その時…、いいえ、林間学校の時から、
私は、ある事を悩んでいました。

舞夏「うぅん…、一夏? どしたの? 大丈夫?」
一夏「舞夏ちゃん、このお守りのチカラ、ジンのチカラって…」
舞夏「え?」
一夏「今まで、私が貰ったジンのチカラって…」
舞夏「ジンの視力…、”視るチカラ”の事?」
一夏「はい。その事に何か意味があるんですか?」
舞夏「意味?」
一夏「はい…」
舞夏「そーんなの私に分かる訳なーいじゃーん」
一夏「そうですよね…。 元々、舞夏ちゃんの宿題だったんですもんね…」

何かを視る、視ているというだけでは、何も解決できない…
その時の私は、割り切れない気持ちで、いっぱいでした…


■視る事の意味

一夏「カイさん」
カイ「ん?」
一夏「視るって…、視えるって、どういう意味なんでしょう…? 視る事に、何か意味は…あるんでしょうか」
カイ「たしかに、視る事は簡単かもしれない。けど、視るだけでそのものを変える事だってあるんだぜ」
一夏「本当…ですか?」
カイ「うん、素粒子物理学とか、量子力学って分野だけどさ」
一夏「?」
カイ「真っ暗だと視る事、出来ないだろ」
一夏「はい」
カイ「光ってさ、波だったり粒だったりするんだけど、視る為にはそれに光を当てなきゃいけない。
   けど、相手も同じくらい小さな素粒子の世界だと、当たった光がその素粒子を動かしたりしちまうのさ」
一夏「視る事で、何かいい事ありますか?」
カイ「いいかどうかは、観測者(一夏を指差す)、視る人の価値観次第かな」
一夏「はいっ」

 時間経過。一夏の家を後にするカイ。

カイ「あれくらいなら、ルール違反じゃない、よな」

 カイ、一夏の家の隣家の窓に沙耶を見つける。
 沙耶、歩き出し、フッと消える。

カイ「! やっぱり…! か…」


■一夏のおばあちゃんの帯留めを見る舞夏


■公園に一人いるカイと、それを見つめる沙耶


■いい傾向

 皐月兄、男連れで現れた皐月を見て。

兄「(皐月に小声で)グループ交際か? いい傾向だな」
皐月「ば、バカ兄貴! 小学校の時の同級生!」
兄「へいへい。 お客様、7名様いらっしゃい!」
皐月「ったく、バカなんだからぁ」
一夏「皐月ちゃん…(苦笑)」
臨「あれ、多岐川の兄貴?」
蛍子「うん、そう。お兄さん、相変わらずだね」
皐月「少しは成長しろってのよぉ」

兄「(うん、いい傾向だ)」


■セイとカイ

セイ「おかえり。遅かったな」
カイ「ああ…」
セイ「…どうした?」
カイ「…あの人を、見たんだ…」
セイ「(驚く)あの人…」
カイ「結構、印象は変わってたけど、あれは、間違いない」
セイ「沙耶、さん…」


■沙耶

→ 傍観モードの沙耶は、やはり普通の人には見えない?


■皐月兄

皐月兄「皐月もこれで男嫌いが直りゃいいけどな」


■一夏モノローグ

結局、この時も私には、視る事以外、何かを変える事も、
誰かの力になる事も、何一つ、出来ませんでした…

ジンの視るチカラを借りる私。
けれど、そんな私を見ている人がいる事に、その時の私は、気が付いていませんでした…


・6年前とは印象が違うという沙耶。人間のように年を取る?それとも姿自体が違う?